外壁塗装の利益率、原価率の目安と適正価格の考え方

適正な価格とは聞くものの、適正な価格の定義が分からず悩んでいるかたは少なくありません。

しかし、外壁塗装工事は利益率や原価率が見えにくく、適正な価格が分からないようにしています。

適正な価格を知るためには、塗装工事の原価や利益を業者が取る理由などを知る必要があります。

外壁塗装の利益率や原価率の目安と適正価格の考え方、原価率を超える値引きをしてくる業者は信用できるのかについて見ていきます。


外壁塗装の利益率、原価率の目安と適正価格の考え方

外壁塗装の利益率、原価率の目安と適正価格の考え方

外壁塗装の利益と原価の設定基準は、塗装業者によって異なるため、同じ工事内容でもすべての塗装業者で塗装費用が同額になることはありません

外壁塗装の費用には主に「材料の仕入れ価格」「職人などの人件費」「諸経費」が含まれています。

この中で原価に当たるのは材料の仕入れ価格ですが、業者によって人件費や諸経費も、工事に必要な原価と見なされることがあります。


材料の仕入れ価格

塗装工事を行う場合は、塗料だけでなく塗装に必要な刷毛やローラーなどの道具も購入する必要があります。

塗料メーカーや塗料の卸店によって価格は異なりますが、同グレードのシリコン塗料などであれば価格の差はほとんどありません。

しかし、ハイグレードのフッ素やセラミックシリコンなど高機能な塗料ほど値段が上がるため価格差が生じます

家の形状や外壁下地によって異なりますが、一般的な家の塗料代を知っておくと原価がより分かりやすくなります。

シリコン仕様でおおよそ70,000〜100,000円、フッ素仕様でおおよそ130,000〜200,000円が相場です。

ここに屋根や防水が追加されると、1.3〜1.5倍の金額になります。

材料費を抑えるために、余った塗料は保管しておき次の現場で使う場合もあります。

しかし、塗料は一度開封すると品質が落ちるため、頻繁に使用する塗料以外は新しく塗料を購入する必要があります。


職人などの人件費

職人などの人件費

ここでの人件費は、営業や職人など現場に関わった人を含めています

建築の現場では、専門職の人が1日働く作業量の単位を「人工(にんく)」と呼びます。

仮に1つの現場で、職人が毎日2人ずつ入り10日の工事日数がかかった場合は20人工と表記されます。

人工は業者によって価格が異なりますが、おおよそ1人工15,000〜25,000円が相場です。

ただし、工事の内容が複雑だったり専門の資格がなければ作業できない場合は、1人当たりの人件費は高額になります。


材料費と人件費以外の費用

外壁塗装工事では、足場の設置と高圧洗浄が必要です。

これらの費用は、材料費や人件費とは別の項目で見積りに記載されます。

材料費や人件費など、塗装工事に必要不可欠な費用を「直接工事費」と呼びます。

最終的に、形に残らない足場の設置や諸経費などの費用を「間接工事費」と呼びます。

足場設置費用は、材料費や人件費に直接含まれないため複合単価方式や原価公開方式のどちらの見積書でも足場設置費用は単独で記載されます。

足場を設置する状況により費用は異なりますが、通常一戸建てだと120,000〜150,000円が相場です。

見積書には、仮設足場や架設工事などの項目が足場設置費用になります。

高圧洗浄費用は、外壁や屋根の古い塗膜や埃を落とす作業です。

足場設置費用と同様に材料費がかからないため、高圧洗浄の項目も単独で記載されます。

m2あたりの高圧洗浄費用は、150〜300円が相場です。

比較的安い単価工事のため「一式◯万円」とまとめて表記する場合もあります。

しかし、多めに請求している可能性もあるためm2数で表記されている具体的な見積書の方が安心できます。


諸経費

諸経費

塗装工事費用の、材料費や人件費、足場設置費用や高圧洗浄費用に含まれない費用を諸経費と呼びます。

諸経費の中でも項目が分かれているものの、具体的に費用にするのが難しいため材料費や人件費の総額の5〜20%程度で設定されています。

諸経費内の項目は、現場管理費と一般管理費に分かれます。

現場管理費とは、品質管理や工程管理など現場を安全に滞りなく進めるための費用です。

主な内容として、材料や資材の運搬費や現場までの交通費、車両の維持費などが含まれます。

現場が遠方になるほど、費用は高くなっていきます

他にも、労災保険などの保険費用や契約書に貼る印紙代などが含まれます。

一般管理費とは、主に事務作業に必要な費用です。

工程表の作成や塗料を発注するため、事務所で発生した光熱費や通信費、事務用品などの購入費が該当します。

これらの費用は、一つの現場で全て請求される訳ではなく、年間の施工件数などを考慮して算出されています。

ここまでが、塗装工事をする上でかかる原価になりますが、見積書には利益を含めた金額で提示されます。

しかし、利益は余分な費用を上値せしている訳ではなく、どの業者に依頼しても発生している費用です。

塗装工事の度に、原価で工事を行うと会社の経営は成り立ちません。

会社が利益を得ることで、働くスタッフの給料や事務所の家賃、会社を成長させる準備費用などを捻出することができます。

この利益の金額を施主の負担にならない金額で、会社を健全に経営していける金額に設定している業者が施主目線の優良企業と呼べます。

塗装業者の中には、100万で家主から塗装工事を請け負って自社施工と称しているのにも関わらず、下請けに30万で工事を任せる塗装業者もいます。

下請けは、30万で足場の設置費用、材料費や人件費を捻出し、無理な内容で工事をする他に方法がありません

100万で工事を受注した会社は原価30%で利益を70%も出していますが、施主からすると健全な経営とは程遠いです。

健全な経営を目指しいる優良な塗装業者だと、利益率は20〜35%くらいになってきます。


原価率を超える値引きをしてくる業者は信用できる?

原価率を超える値引きをしてくる業者は信用できる?

本来、優良な塗装業者は利益額で見分けることができます

しかし、建築の工事は見積りの書式が複雑なため利益額が分かりにくく、まず塗装業者から利益額を公開することはありません。

塗装工事の見積書には、複合単価方式と予算原価方式の2種類の作成方法があります。

複合単価方式とは、材料費や人件費に利益を合算してm2数などを掛けた金額になります。

塗装工事は、ほとんどが複合単価方式で算出されるため単価率と利益率が分かりにくいことが多いです。

もう一つの予算原価方式とは、材料費や人件費、諸費用を別々に計算し、別途利益額を記載する方式です。

予算原価方式は、公開原価方式とも呼ばれ一見利益額を公開しているように見えます。

しかし、一般管理費や現場管理費などを分かりにくいようにしているため、純粋な利益は分からないようになっています。

そのため、見積書から利益額を見抜くのは容易ではありません

利益額が分からない時は、原価費用から見抜く必要があります。

塗装工事の原価のほとんどは、塗料代や人件費、足場設置費用です。

塗料代を抑える方法は、古い塗料を使い回したり、規定以上のシンナーや水を希釈して薄めたりします。

次に人件費を抑える方法は、必要な塗装の工程を省き少しでも早く工事を終わらせます。

しかし、これらを行うと塗膜の耐久性が落ち悪い噂が流れるため、このような塗装業者の評判はあまり良くありません。

足場の設置費用は安く抑えても施主には影響がないように感じますが、足場が悪いと丁寧な仕事も安全な作業もできないため品質は低下します。

足場費用を抑えるために、丸太を足場代わりににしたり足場を設置せずに脚立のみで行う塗装業者は特に注意が必要です。

原価率を超える塗装工事は、通常ありえません

原価率を超える値引きをしている場合は、高い可能性で品質の悪い塗装工事につながります。

そのような業者は品質が悪いだけではなく、近隣からのクレームや約束の反故など様々なマイナス要因があります。

適正な塗装工事とは、関連企業と連携し努力で原価を下げ、施主に負担のかからない利益を上乗せした価格を提示し、健全な経営を行える業者が行う工事です。


まとめ

外壁塗装の利益率、原価率の目安と適正価格の考え方のまとめ

外壁塗装の利益率や原価率の目安と適正価格の考え方、原価率を超える値引きをしてくる業者は信用できるのかについて見てきました。

内容をまとめると以下のようになります。

  • 原価率と利益率は8:2が適正目安
  • 利益を上乗せするのは会社経営のため
  • 原価率を超える値引きはありえない

利益が原価のおおよそ20%を下回ると、会社は赤字経営になっていきます。

会社を健全に経営することで、塗装工事後のアフターケアも行えるため施主にとっても必要な出費になります。

原価率を超える値引きは、塗装工事費用の節約ではないため、絶対に選択してはいけません。

しかし、中には塗装内容に魅力を持たせながら、平然と通常より高い見積書を提示し、原価を抑えるために雑な工事を行う塗装業者もいます。

塗装業者を選ぶ際は、悪い評判がないか口コミなどで確認して、適正な価格で適正な工事を行える塗装業者を選びましょう。