建物は、外的要因による伸縮や揺れなどによって外壁塗装を行うころには、ひび割れや劣化が起きています。
微弾性フィラーを使うことで、ひび割れを埋めたり不陸を埋めることができ、上塗りとの密着力を向上することができます。
しかし、微弾性フィラーや弾性塗料は施工方法が複雑なため手抜き工事が起きやすいため、施工前に正しい施工方法や注意点を知っておく必要があります。
外壁塗装における微弾性フィラーとは、弾性塗料の単層、複層、微弾性塗料の違いについて見ていきます。
外壁塗装における「微弾性フィラー」とは
外壁塗装で使われる塗料の中に、微弾性フィラーと呼ばれる塗料があります。
微弾性フィラーとは、JIS規格6909で定められた20℃で伸び率50〜100%の塗料を指しています。
同じJIS規格で、伸び率が120%を超える塗料を弾性フィラーと呼び、反対に一般的な塗料を硬質塗料と呼びます。
微弾性フィラーのメリット
柔らかくひび割れに強い
弾性は、力が加わった時に動き力がなくなった時に元に戻る性質があります。
建物は、太陽や湿気などで伸縮したり台風や地震で揺れたりして、絶えず動いています。
外壁が動いた際に、硬質塗料だと動きに追従できずに割れてしまいます。
しかし、柔らかい弾性塗料は外壁がある程度動いても追従することができるため、ひび割れが起きにくくなります。
防水性の向上
弾性塗料は、外壁との密着力が良く塗膜も厚くなるためカバー力も上がり、防水層として機能します。
さらに、先程のひび割れにも追従する機能があることで外部からの水の浸入を防ぐことができます。
モルタル壁と相性が良い
モルタル壁は、非常にひび割れを起こしやすい外壁です。
他にも、モルタル壁は吸水性が高く雨水などの水を吸水してしまうため、躯体の保護を塗料で行う必要があります。
そのため、弾性塗料はひび割れを起こしにくく防水層を形成できるため、モルタル壁に適しています。
微弾性フィラーのデメリット
耐用年数を求める場合割高になる
弾性塗料は、耐用年数がアクリル系塗料と同じで5年前後しか耐久性がありません。
耐用年数を上げる方法として、厚く塗ることで耐用年数を上げることが可能ですが、その分工程が増えるため割高になっていきます。
サイディングボードへの使用は不可
サイディングボードの、夏場の表面温度は太陽熱によって80℃近くまで上昇します。
そのため、弾性塗料は柔らかくなり外壁表面にいくつもの膨れがおきます。
膨れた箇所は、当然下地と密着していないため剥がれの原因に繋がっていきます。
弾性塗料は、以前は多く使われていましたが最近ではサイディングボードが普及したり、水膨れが起きたりするため使われる機会が少なくなりました。
しかし、微弾性フィラーはデメリットを考慮したり下地ごとに合わせたサイディング用などが発売されたりしています。
微弾性塗料は、適切な工法で行うことでひび割れの追従や防水性を活かしつつ、デメリットを起こしにくくすることで適材適所で使うことが可能になる塗料です。
弾性塗料の単層、複層、微弾性塗料の違い
弾性塗料の仕上げ工法は三種類あります。
弾性塗料の単層仕上げ
弾性機能が保持できる年数は、3〜5年です。
作業工程はシーラー一回塗り、単層弾性塗料を二回塗りの計三回塗り仕上げです。
単層弾性仕上げは、施工費用も安く作業時間も短く済みますが、5年前後で塗料が硬くなり弾性の機能がなくなります。
単層弾性塗料は、ベースがアクリル系塗料になります。
中にはシリコン系塗料も出ていますがシリコン樹脂の配合量が少ないため耐用年数も短く、費用対効果は低いです。
大手塗料メーカーからも、耐用年数が長い単層弾性塗料が発売されていないため、何度も塗り直しが必要になります。
弾性塗料の複層仕上げ
弾性機能が保持できる年数は、10〜20年です。
作業工程は、シーラー一回塗り、高弾性中塗り塗料二回塗り、複層仕上げ塗料二回塗りの計五回塗り仕上げです。
塗装工程が多いため、高品質な弾性塗膜が形成され耐用年数も長くなります。
しかし、施工価格が高く手間も掛かるため現状専門業者も積極的に選ばない工法です。
耐用年数が長いフッ素系塗料でも、1m2の単価が3,500〜4,500円に対して、弾性複層仕上げは5,500円と非常に高い仕上げ工法です。
微弾性塗料の仕上げ工法
弾性機能が保持できる年数は、1〜3年です。
作業工程は、微弾性フィラー一回塗り、任意の上塗り塗料二回塗りの計三回塗り仕上げです。
弾性塗料の中で多い仕上げ工法が、微弾性フィラーを下塗りに使用し、上塗りを一般的なシリコン系塗料やフッ素系塗料を塗る仕上げ工法です。
弾性機能は、高くはありませんが上塗り塗料の耐用年数に付随するため、上塗り塗料の耐用年数が残っていれば弾性機能が失われても保護機能は維持されます。
弾性塗料は、工法や使用方法が複雑なことから手抜き工事や知識不足による不具合が起こりやすです。
手抜き箇所は、塗料を薄めて使ったり厚さを付けずに仕上げたりします。
それらの手抜きを行えば、塗料の缶数が規定よりも少なくなるため、搬入の際や使い終わった空缶などで使用数量を確認しましょう。
まとめ
外壁塗装における微弾性フィラーとは、弾性塗料の単層、複層、微弾性塗料の違いについて見てきました。
内容をまとめると以下のようになります。
- 弾性塗料は、下地調整と防水性の機能がある
- モルタル壁には適しているがサイディングボードには適していない
- 弾性機能を高めるためには、フッ素系塗料よりも高い費用が必要になる
弾性塗料は、軽度のひび割れや不陸であれば埋まっていきます。
塗料の中では、防水性も高く防水層を形成することも可能です。
しかし、しっかりとした弾性塗膜を形成するためには高い費用が必要になります。
外壁材によっては、向き不向きがあるため適材適所で使い分けることが重要です。
弾性塗料は、機能性を見ると一見万能な塗料に見えますが、使用方法は複雑なため施工性が向上した微弾性フィラーであっても注意が必要です。
微弾性フィラーを、施工した経験がない塗装業者はいない程一般的な塗料ですが、手抜きも多くなる箇所でもあります。
そのため、施工内容を確認する中で丁寧に説明をしてくれるような、信頼の置ける施工業者を選ぶ基準の一つにしてみてください。