外壁の目地補修は、外壁塗装の際に選ぶ項目として後回しにされることが多い作業です。
しかし、家を守る上で目地補修は外壁塗装とは違う重要な理由や役割があります。
本来、目地補修は外壁塗装と同時期に打ち替え作業をする必要があります。
家にとって、欠かすことができない目地補修の必要性を知り定期的にメンテナンスを行うことで、家全体の耐久年数を延ばすことができます。
外壁の目地補修をする理由や役割、目地が劣化する流れや目安、劣化した場合のデメリット、目地補修にかかる費用や補修の流れを見ていきます。
外壁の目地とは?必要な理由や役割
外壁のサイディングやALCなどのボードやパネルは、非常に硬い材質の板が使われています。
硬いボードやパネル同士が、ぶつかったり強い負荷がかかると割れてしまいます。
そのため、施工の際に外壁同士が接触しないよう一定の隙間を空けて貼っていきます。
この時に、できる外壁材と外壁材の隙間が目地と呼ばれています。
目地は、そのままの状態では外壁内部が見えているため内部が剥き出しで劣化しやすい状況です。
その剥き出しの目地に、コーキング材と呼ばれる伸縮性があるゴム状の樹脂を充填しています。
目地部分は、硬いものではなくゴム状の伸縮するものでなくてはなりません。
外壁材は、温度や湿度によって収縮や膨張が繰り返されます。
この収縮や膨張を吸収するのが、目地になるため目地に使われる材料は伸縮性のあるものが使われます。
目地コーキングは、ボードやパネルの外壁材の継ぎ目だけでなく、窓や扉廻り、モルタル壁などにも使用されています。
目地コーキングは、家の揺れや振動が外壁材に伝わらないようにする役割もあります。
しかし、経年劣化によりゴムが硬くなると緩衝材の役割を果たさなります。
目地が劣化する流れと目安、劣化のデメリット
目地コーキングは、紫外線や雨風によって劣化が進み痩せて行きます。
さらに、外壁の収縮や膨張によって引っ張られたり押されたり、家の揺れや振動を吸収したりして外壁が割れないように防いでいます。
このように、常に押し付けられたり引っ張られたりを繰り返しているコーキングは、耐久性が落ちていきます。
施工した当初は、コーキングが柔らかいため伸縮に耐えることができます。
しかし、経年劣化で徐々に硬くなってくると伸縮性が外壁等の動きに追いつかなくなり、外壁とコーキングに隙間ができたりコーキングが割れたりします。
昔に比べればコーキング耐用年数は延びましたが、外壁の塗料に比べると充分な耐用年数ではありません。
ほとんどの外壁は、長くて10年ほどで家の環境によっては5年ほどで劣化します。
劣化して痩せが生じたコーキングは、徐々にひび割れが目立つようになります。
さらに放置すると、コーキングが目地から剥がれてしまい、外壁材が建物に接触して外壁の強度を保つことができなくなります。
さらに、コーキングのひび割れや剥がれた箇所の隙間から雨水が侵入してしまいます。
通常は、目地に少量の雨水が侵入しても抜ける設計になっています。
しかし、何度も水が侵入したり目地が剥き出しになったりしていると目地内部が劣化し内部に水が入る原因に繋がります。
そのため、目地のコーキングは定期的にメンテナンスを行う必要があります。
外壁塗装の目地補修の費用相場と補修の流れ
目地に使われるコーキングは、一種類だけではありません。
目地塗装を行わない場合
目地塗装を行わない場合は、変成シリコンコーキングが一般的に使われます。
ほとんどは新築時の塗装が行われない時に使われ、丈夫なコーキング材です。
紫外線などの外的要因に強いですが、外壁との密着力が弱いです。
目地塗装を行う場合
コーキングの上に塗装する場合は、塗膜でコーキングを保護できるため、コーキングに耐候性を求める必要がありません。
そのため耐候性は弱いですが、密着力に優れたウレタン系のノンブリードが一般的に使われます。
ノンブリードが選ばれる理由は、コーキングを柔らかくする可塑剤が塗膜に移行し周囲の埃などを吸着して黒なるのを防ぐために使われています。
その他に、これらのコーキングには一液や二液があります。
一液よりも二液の方が耐久性は良いですが、技術を要するため注意が必要です。
コーキング工事は、国家資格が必要な難しい技術職です。
一見簡単そうに見えますが、技術がなければ見た目が悪いだけでなく耐久性も悪くなります。
そのため、素人がDIYで施工するのは後の不具合に繋がる可能性が高いです。
DIYで行えば、材料代が4〜7万円に足場代が15万円ほどかかります。
業者に頼むと、材料代4〜7万円に技術費や日数分の人工で8〜12万、足場代が15万ほどかかります。
もちろんDIYの方が安く仕上がりますが、見た目だけでなく内部の漏水に繋がれば外壁を全て剥がしての工事になる可能性も忘れずに自己責任で行いましょう。
コーキングの補修方法
コーキングの補修方法は、増し打ちと打ち替えの二種類に分けられます。
増し打ちは、コーキングが痩せていても密着力は残っている場合に、旧コーキングの上に新しいコーキングを打ち込んでいく作業です。
増し打ちは打ち替えに比べて安いですが、塗装業者から生まれた工法と言われており、本来のコーキング工事は打ち替えが基本となります。
打ち替え作業は旧コーキングを全て撤去し、新しいコーキングを目地に充填していく作業です。
コーキング打ち替え補修の流れ
打ち替え作業は、一つずつの工程で気をつける必要があります。
旧コーキングの撤去
旧コーキングをカッターや電動工具を使い全て撤去します。
この時、目地の側面に着いた旧コーキングもしっかりと取り除きます。
マスキングテープによる養生
目地の外側の外壁や窓等をマスキングテープで養生します。
養生をしっかりと行わないと、目地の周りにコーキング材が付着して見た目が悪くなります。
ボンドブレーカーの確認
旧コーキングを撤去する際に、コーキングと一緒に取れることがあるため、剥がれた箇所に新しいボンドブレーカーを貼っていきます。
ボンドブレーカーは、コーキングの三面接着を防ぐ絶縁テープです。
ALCやモルタル壁であれば、三面接着でなくてはいけませんが、サイディングボードなどは側面のみの二面接着でなくてはいけません。
コーキングの裏には、ハットジョイナーと呼ばれるものがあります。
ハットジョイナーとコーキングが密着していると、コーキングは裏で固定され外壁が動いた時に側面が離れて隙間が空いてしまいます。
さらに、ハットジョイナーとボンドブレーカーにバックアップ材が入っている場合もあります。
プライマーの塗布
プライマーの塗布作業は、密着力に繋がるためコーキング専用のプライマーを使用します。
塗装業者の中には、塗装用の下塗り材を塗っていることもあるため施工前や施工中に確認することが必要です。
コーキング材の充填
一液コーキングは、カートリッジと呼ばれるものでそのまま充填していきます。
二液コーキングは、専用の撹拌機で混ぜていきます。
二液コーキングの撹拌や使用要領は、とてもシビアなため必ず専用の機械で撹拌されているか確認をする必要があります。
撹拌後に二液コーキングガンで充填していきます。
へらやバッカーなどでコーキング表面を整える
コーキング表面を整える作業は、後の見た目で残ってくるため技術の良し悪しが顕著に出てきます。
見た目だけでなく、空気の隙間なくコーキングを充填する技術も必要な作業です。
空気の隙間ができると、厚みが均一でないため耐久性も落ちますし、見た目も悪くなります。
マスキングテープを剥がす
マスキングテープを剥がすタイミングも、コーキング材の種類や時期によって変わってきます。
剥がすタイミングに決まりはないため、職人の経験に任されます。
剥がし方が悪いと、コーキングの側面が不恰好になってしまいます。
専門の職人は二液コーキングを使いますが、慣れていない職人が二液コーキングを使うと様々な不具合が出てきて逆効果になります。
専門知識がない職人が二液コーキングを使用すると、次のような不具合が起きます。
撹拌作業をしっかりとしないため、硬化不良でコーキングが固まりません。
旧コーキング材をしっかりと撤去しないため、密着力が低下します。
専用プライマーを使用したり表面上だけ塗ったりするため、数年でコーキングが剥がれます。
二面接着や三面接着を守らないため、コーキングの役割を果たしません。
乾燥時間を守らないため、品質が低下しコーキングと塗料の密着も悪くなります。
目地コーキングは、外壁塗装と同時に工事する選択肢の一つくらいにしか考えられていないことが多いです。
しかし、外壁塗装よりも耐用年数が少なく劣化した場合外壁内部の劣化にも繋がる箇所です。
そのため、7〜10年毎のコーキングの打ち替えが一番理想なメンテナンスです。
しかし、目地コーキングだけの作業は現実的ではないため、少なくとも外壁塗装の際には目地コーキングの打ち替え補修作業をおすすめします。
まとめ
外壁の目地補修をする理由や役割、目地が劣化する流れや目安、劣化した場合のデメリット、目地補修にかかる費用や補修の流れについて見てきました。
内容をまとめると以下のようになります。
- 目地は外壁や窓同士の接触や建物の動きを吸収している
- 経年劣化により硬くなると家の動きに耐えれなくなり割れたり隙間ができたりする
- 目地補修は、増し打ちよりも打ち替えが基本
目地のコーキングは、近くに幹線道路があると割れる時期が早いなど周囲の環境の影響が大きいです。
しかし、それ以上に正しい施工要領と職人の技術に耐久性が左右されます。
そのため、増し打ちよりも打ち替え、一液よりも二液、塗装職人よりもコーキング職人の選択が重要です。
ただし、金銭面に余裕がなく塗装業者に依頼する場合は打ち替えを二液で施工できる、技術のある塗装業者を選ぶようにしましょう。