外壁塗装は、建物に色を着ける前に定期的に建物の状態を確認する目的もあります。
ひび割れや雨漏りは放置しておくと建物自体に影響を及ぼすため、状態が悪化している場合は補修を行ってからの外壁塗装工事になります。
しかし、ひび割れ補修や防水工事は表面に塗料を塗ることで内部が隠れてしまうため、業者に依頼する前に特徴や施工の流れを知っておく必要があります。
外壁塗装の防水工事の効果や役割、施工料金、防水工事の施工の流れを見ていきます。
外壁塗装の防水工事の効果、役割、料金
防水工事は、ベランダや屋上だけでなく外壁塗装を行う際にも必要になります。
防水工事とは、建物の雨や水にさらされる部分を防水処理することで、建物内部に水が染み込むのを防ぐ工事です。
外壁の防水工事
一般的に、外壁塗装を行う前に外壁に防水処理を施します。
防水処理の方法は、シーリングだけの時もあれば樹脂を流し込む時もあります。
ひび割れは、軽度な状態から重度な状態までがあります。
ヘアークラック
文字通り、髪の毛ほどの細さのひび割れで状態は軽度なため、塗装で防水処理することが可能です。
乾燥クラック
乾燥クラックは、モルタルなどの湿式工法による外壁が乾燥の過程で水分の蒸発により痩せて収縮することで、表面にひび割れが起こる現象です。
素地が乾燥すると、それ以上ひび割れが起きることはなく状態は軽度なため、塗装で防水処理することが可能です。
構造クラック
建物自体の構造的な欠陥や凍害など、建物の構造に問題が起きている状態です。
この状態で放置すると、水が入りやすくなっているため内部が徐々に腐食していきます。
塗装では防水処理できないため、シーリング材を十分に補填できるVカットなどの工法が行われます。
外壁の内部は防水シートで覆われているため水が内部に入り込んでも、すぐに水漏れが起こることはありません。
ひび割れが長期間放置されて、防水シートが雨水にさらされ続けることで腐食して破れていきます。
防水シートが機能しなくなった場合、雨水は内部まで浸透していきます。
そのため、ヘアークラックや乾燥クラックではなく構造クラックのような1mm以上のヒビが入っている場合は早急に対処する必要があります。
しかし、ひび割れの補修金額は見積書どおりにいかないこともあります。
ひび割れは、外見だけだと分かりにくく足場を設置後に打診調査を行います。
そのため、足場を設置してからでなければ正確な見積もり金額は算出できません。
価格相場は、外壁の種類や足場の有無によって異なりますが、1m2で1,700〜2,500円が相場です。
30坪の一軒家のひび割れ補修のみを行った場合、足場なしで1〜5万円、足場ありで1〜50万円くらいになります。
ベランダや屋上の防水工事
ベランダや屋上などの防水工法は、4種類ありベランダはウレタン防水かFRP防水が主流です。
アスファルト防水やシート防水は、マンションやビルなどに使われており、一軒家の場合は鉄骨や鉄筋コンクリートに使われています。
今回は、一軒家で主流なウレタン防水とFRP防水を例に説明していきます。
FRP防水の特徴や料金
FRP防水は、繊維強化プラスチックで腐食しにくく耐久性が高いです。
もともと、水に常に晒されている船舶で使われていたものを、バルコニー向けの防水材料として強化されたことで一気に普及しました。
FRP防水を、ベランダに使用した場合の耐用年数は8〜12年です。
施工価格は、1m2あたりトップコートのみで2,500〜3,000円、防水層も含めると1m2あたり5,000〜8,000円が相場の価格です。
値段はウレタン防水よりも高いですが、施工が一日で終わるため施主の負担は軽減されます。
ウレタン防水の特徴や料金
ウレタン防水は、ウレタン樹脂を主原料とした液体を外壁塗装と同じような要領で塗膜を形成して防水層を作っていきます。
ウレタン防水の歴史は、FRP防水よりも長く使用頻度は防水工法の中で首位に位置します。
施工方法は、密着工法と通気緩衝工法の2種類があります。
ウレタン防水を、ベランダに使用した場合の耐用年数はFRP防水よりも長く10〜15年です。
施工価格は、1m2あたりトップコートのみで2,000〜2,500円、防水層も含めると1m2あたり4,500〜7,500円が相場の価格です。
一般塗装のように施工できるため、扱いやすく下地のひび割れにも追従します。
さらに、複雑な構造にも対応できるため一軒家だけでなくビルの屋上などにも使用されています。
防水工事は、m2数が少ない場合m2単価で計算すると原価割れを起こしてしまうため、一式工事になる場合もあります。
一式工事の価格相場は6〜10万ですが、屋上を施工する場合などm2数が多い場合で、一式工事になっていた時はm2単価が不透明なため注意が必要です。
防水工事の施工の流れ
外壁防水工事の流れ
ひび割れを補修する際は、軽度な状態であれば塗装で防水処理をします。
塗装のみの場合は、下塗りで微弾性フィーラーを使いひび割れを埋めていき、上塗り塗料で防水効果を保たせます。
しかし、状況によってはひび割れ箇所にエポキシ系樹脂を注入する必要があるため、素人判断はせず見極めは専門家に任せましょう。
重度のひび割れが起きている場合は、外壁に歪みが生じており、今後も歪んだ力が同じ箇所にかかります。
あえてひび割れを一定の幅まで広げることで、シーリング材を奥まで充填していきます。
そうすることで、力がまた加わっても目地が力を吸収することができます。
この時に、ひび割れを広げずにシーリング材を充填すると奥までシーリング材が届かず、幅もないため力を吸収しきれない無意味な目地になってしまいます。
ベランダや屋上の防水工事の流れ
FRP防水の施工方法
FRP防水は、プライマーを塗ってからポリエステル樹脂を三回塗布と、二枚敷きのガラスマットを交互に施工してから最後にトップコートを塗ります。
施工手順は多いですが、ベランダほどの大きさであれば一日で施工は完了します。
ウレタン防水の施工方法
密着工法は、一般塗装と同じでプライマーを塗布してからウレタン樹脂を二回塗って防水層を作り、トップコートを塗ります。
防水力を高める場合は、補強用のガラスクロスをプライマーの上に敷くこともあります。
通気緩衝工法は、既に雨漏りしている建物や厚い保護コンクリートに覆われた屋上に適しています。
通気緩衝工法の特徴は、下地が濡れていても施工が可能です。
施工方法は、裏側が溝になっている通気緩衝シートを貼り付け、ウレタン防水材を塗布します。
下地の水分が、シート裏の溝から脱気装置に伝わって外に逃がすため、中の水分が日に当たった時に塗膜が膨れる現象を防ぐことができます。
ベランダ防水のメンテナンス
FRP防水もウレタン防水も、フリーメンテナンスで10年以上保つ訳ではありません。
防水工事を行ってから、5年を目安にトップコートの塗り替えが必要になります。
さらに、定期的に掃除を行い排水口や排水用の溝もきれいな状態を保ち、物を置く場合はゴムシートなどを1枚挟んでから置くようにしましょう。
防水処理は、少し状況が変われば施工方法が異なります。
施工方法を間違えると、状況が悪化することがあるため素人判断で施工は行わず、専門業者に依頼することが大切です。
まとめ
外壁塗装の防水工事の効果や役割、施工料金、防水工事の施工の流れについて見てきました。
内容をまとめると以下のようになります。
- 1mm以上のひび割れは雨漏りに繋がる
- ベランダ防水の主流はFRP防水とウレタン防水
- 防水工事は下地を完全に乾かす必要があるがウレタン防水の通気緩衝工法なら濡れていても施工可能
毎回業者に頼むと高いため、自分で直すことも可能ですが、施工方法によっては逆効果な施工もあります。
軽度のひび割れであれば良いですが、1mm以上のひび割れは雨漏りに直結するため、専門業者に依頼する必要があります。
ひび割れの補修や防水工事は、塗装の職種と似ている部分があります。
しかし、見てきた防水工事だけでも「シーリング屋」「注入屋」「左官屋」「防水屋」の専門分野になります。
ベランダ防水の主流はFRP防水やウレタン防水ですが、下地の水分が抜けきらない場合は、通気緩衝工法をするなど防水工事は専門知識が必要です。
塗装業者が防水工事も一緒に行う場合は、施工技術だけでなく経験や知識がある業者なのか、しっかりと確認するようにします。
心配な場合は、施工単価は上がってしまいますが専門の業者に依頼できないか確認をしてから、見積もりを取り直して納得してから工事をはじめるようにしましょう。